スタンダードプレイング理論
スタンダードデッキ。それは全ての基本であり、デッキ作成において必ず仮想敵に設定されるデッキである。
それ故に、スタンダードデッキでのプレイングが、そのデュエリストのレベルを計る指針となるだろう。
今回のコラムは、僕の1年半におけるOCG歴の集大成とも言えるスタンダードを扱った際のプレイング理論である。
1・スタンダードデッキの区分と特性。
いたずら好きな双子悪魔の制限、そして最近の流行であるスタンダード番兵必須化により、スタンダードとハンデスの区分が非常に曖昧になった。
もともとハンデスはスタンダードから派生したデッキであるから、デッキ内容、プレイングにおいてはスタンダードとほとんど同じようなものである。
そこで、ここでは追い剥ぎゴブリンや首領・ザルーグなどを積極的に投入したデッキをハンデスデッキとして扱い、従来のハンデスデッキはスタンダードとして扱うことにする。
そうすることにより、スタンダードという漠然としたデッキの形がある程度まとまるので、ご容赦願いたい。
また、スタンダードの特性であるが、全デッキの中でもっとも安定しているデッキということは常識であろう。
安定しているということは、安定して勝てるということであり、引きが勝負を大きく左右するカードゲームにおいて安定して勝つためには、手札や引き運になるべく左右されないデッキであることが求められる。
そのため、スタンダードでは爆発的な力を持ったコンボはあまり採用されない。爆発的な力を持つコンボは、失敗した時のリスクも大きいからだ。じわじわと相手を牽制しながら勝利を呼び込む。もっとも地味であることが、すなわちスタンダードの特徴であり強さであるのだ。
大会ではマッチ戦と呼ばれる形式で戦う。3回デュエルし、2回勝ったほうが勝ちである。
つまり、スタンダードとは、3回やって3回勝てるデッキではなく、3回やって2回勝てればいいデッキなのだ。
2・スタンダードデッキの作り方。
スタンダードなんて誰が作っても同じだよ、と言う人がいる。
確かにそれは正しい。スタンダードとは今までにもっとも多く使われてきたデッキの総称であり、全てのデッキの基本となるデッキである。ゆえに、慣れた人なら基本的なスタンダードなど5分もあれば作れてしまうだろう。
しかし、この一見簡単に見える構築から、既にその後のプレイングを見通したカードチョイスが必要になるのである。ただ闇雲に強いカードを入れればいいというものではない。
まずはスタンダードデッキの作り方を細かく見ていこう。
○ 必須(?)カードのチョイス
スタンダードデッキの基本は、「単体で使えるカードを優先して投入する」ことである。そのほうが手札事故が少なく、安定して戦えるからだ。どういうことかというと…。
たとえばAというカードが、Bというカードと組み合わせることにより最大限の力を発揮できる(コンボ)としよう。
頭で考えただけではそれが素晴らしいコンボに思えても、実際に対戦を重ねればAとBが同時に手札にそろわないケースも多々あることがわかるだろう。
つまり、AというカードはBと同時に使わなければ効果を発揮できないため、それ単体では使えないカードということになる。
それはつまり、引きに左右される、ということである。スタンダードは、この引き次第という構成を極端に嫌う。
そこで、スタンダードにおいては、「単体で使えるカード」をなるべく優先して入れることが必要になってくるわけだ。
具体的な例を示そう。
「強制接収」が発動している時に、「天使の施し」を発動する。これは決まれば確かに強力である。強力ではあるが、強制接収をまず発動させ、破壊されないように維持し、その状態で天使の施しを発動できる確率は如何ほどであろうか。
他のコンボにおいても同じことが言えるが、スタンダードにおいては「発動できた時の効果」よりも、「発動できる確率」を優先してカードを入れるべきなのである。
安定性を求めるスタンダードならではのチョイスといえるだろう。この辺がスタンダードは面白くないと言われる所以の一つなのだが。
さて、「単体で使えるカード」であるが、これは言うまでもなく制限、準制限に設定されたカードである。具体的に言うと、
「人造人間−サイコショッカー」「強欲な壷」「天使の施し」「サンダー・ボルト」「ブラック・ホール」「死者蘇生」「早すぎた埋葬」「心変わり」「強奪」「ハーピィの羽根帚」「大嵐」「王宮の勅命」「リビングデッドの呼び声」
といったカードがそれにあたる。なぜ制限や準制限がかけられているのかというと、「3枚入れるとゲームバランスが崩れる」からであり、強力であることの証明は制限という時点で既になされているわけだ。
これらをまずは投入することでデッキの骨組みが出来上がる。この辺りは、熟練のデュエリストならもはや常識であろう。
ただ、これらの必須カードも、時と場合によっては抜くべきであるということは覚えていてもらいたい。デッキに絶対はないのだ。
○ その他のカードチョイス
上記の必須カードを投入した後は、「デッキの方向性」「使いたいコンボ」を想定してカードをチョイスしていくといい。
先程、出来る確率が低いコンボを想定したカードは入れるべきではないと書いた。これは裏を返せば、「出来るコンボが多いカードを入れるべき」であると言える。
どういうことかというと、
たとえば「スケープ・ゴート」を入れる場合、「強制転移」や「団結の力」を一緒に入れると効果的にコンボが組める。
つまり、
スケープ・ゴート+強制転移=相手モンスターを奪うトリッキーコンボ。
スケープ・ゴート+団結の力=一気に高攻撃力のモンスターを生み出す止めに最適なコンボ。
スケープ・ゴート+キャノン・ソルジャー=最大で2500ものダメージを与える強力なコンボ。
どうだろうか。スケープ・ゴートとコンボが組めるカードは、これほど大量にあるのである。前述した強制接収と違う点はここだ。スタンダードにおいて、強制接収では施しぐらいしかコンボを組めるカードがない。
しかも、スケープ・ゴートは単体でも守備魔法として役に立つ。これも評価できる点である。
さらに、スケープ・ゴートとコンボが組める上記の3枚のカードは、それぞれ別なカードとコンボを組むことが可能だ。
たとえば、
強制転移+キラースネーク(キラートマト、その他自軍の弱小モンスター)
団結の力+複数の自軍モンスター(特に特殊召喚可能なモンスター)
キャノン・ソルジャー+心変わり(強奪)
またさらに、
心変わり(強奪)+サイコショッカー
キラースネーク+天使の施し(または手札を捨てるコストを持つカード全般)
といった感じに、どんどんとコンボが繋がっていく。この「コンボの連鎖」こそがスタンダードの強味であり、カードを選ぶ際には、「コンボの連鎖」を考慮に入れた上でカードをチョイスすることが必要なのである。コンボを組める相棒カードが多ければ多いほど、手札に左右されず万能に戦うことができる。
安定性を求めるスタンダードでは、「コンボの連鎖」こそがもっとも重要な勝利へのファクターとなる。
○ 上級モンスター考察
召喚に生け贄を必要とする上級モンスターは、スタンダードではあまり好まれない存在である。OCGでは上級モンスターでもあっさりと魔法などによって破壊されるため、手間をかけてまで出す必要がないからだ。
しかし、生け贄というコストを補えるほどの効果を持つ上級モンスターならば話は別である。
まずは「人造人間−サイコショッカー」である。
従来のスタンダードにおいても、このカードは必須カードとされてきた。実際、生け贄1体で出せ、2400という攻撃力を持ち、ウィッチで手札に入れることが可能なこのカードは、デュエルにおいてエンドカード(デュエルを終わらせるほどの力を持つカード)とも言える強力なカードである。
実際、このカードがデュエルシーンに与えた影響は計り知れず、スタンダードにおける罠の数を10枚以下に追いやった原因ともいえるカードだ。
上級モンスターというデメリットを考慮に入れても、スタンダードには絶対に入れておくべきであろう。
なぜなら、このカードを入れるだけで相手の罠を打ち消す「王宮のお触れ」や「盗賊の七つ道具」などを入れる必要がなくなり、必然的に他の強力なカードのためにスペースを割くことが出来るからである。
一見重そうに見えるショッカーだが、これほど使い勝手のいい上級モンスターは他にはない。
最近ショッカー不要論もちらほらと聞かれるが、それは罠が少ないスタンダードが主流過ぎるため、罠の怖さを忘れているのである。
やってみるとわかるが、ショッカー抜きで罠主体のデッキとやるとかなり苦戦する。どんなデッキを相手にしても万能に戦えるのがスタンダードの強さであるのだから、1枚で罠デッキを封じられるショッカーは入れておいて損はないだろう。
となると、問題はショッカー以外の上級モンスターである。
ここで注意すべきなのは、上級モンスターはショッカー1枚でも問題ないということである。後で述べるが、たとえば手札0枚で場に何もない時に上級モンスターを引いても仕方がないため、上級モンスターは少ないにこしたことはないのだ。
が、ショッカー以外にも強力な効果を持つ上級モンスターは多いため、それらを2枚目の上級モンスターとして入れることも最近では当たり前になりつつある。
現時点(8/11)での2枚目の上級としての候補は、
「冥界の魔王 ハ・デス」「レッサー・デーモン」「ヴァンパイア・ロード」「天空騎士パーシアス」
の、4枚が挙げられる。これらが候補になったわけは、モンスターを1体生け贄にして召喚するという手札的デメリットを、1ターンで解消できるモンスターであるからだ。逆に言えば、1ターンでデメリットを解消できないモンスターは不要ということになる。2ターン生き残る事が困難な現状のデュエルでは、出来るだけ素早くデメリットを解消しなければ、上級を出す意味がないのである。
ちなみに、手札や場で相手との差をつけていくことを「アドバンテージを取る」、というが、これらの上級モンスターは数ある上級モンスターの中で、アドバンテージを簡単に取れる稀少なモンスターなのである。
しかし、4枚全てを入れるわけにはいかないから、自分のデッキに合わせて1枚をチョイスすることになる。
具体的にどれを入れるかは自分で調整してもらわなければならないのだが、参考までに述べておくと、
「冥界の魔王 ハ・デス」
サーチできない上に蘇生も不可能であるため、事実上ドロー待ちとなる。運次第という観点からはスタンダードには入らないのだが、それを補って余りある効果を持っている。
ハ・デスなしでも戦えるデッキを組み、サポート程度で入れるべきであろう。決して主力にしてはならない。
「レッサー・デーモン」
ハ・デスと似た効果を持つが、ウィッチサーチ可能で蘇生制限がないため、主力的に使っていける。
ウィッチやクリッターを攻撃することが出来れば、既に召喚した時点でのアドバンテージは取り返していると言える。
「ヴァンパイア・ロード」
戦闘破壊されるまで場に残り続けるため、非常に生存率が高い。OCGのモンスター群では異質な存在と言える。生存率が高いということは壁になり、場のアドバンテージも奪えるということである。召喚さえすれば、その時点で生け贄召喚のアドバンテージは解消できている。
また、罠を恐れず攻撃できるというショッカーにも似た特性を持っている。
「天空騎士パーシアス」
能力は4枚の中でも最高クラスである。たいていの場合1ドローできるので、LP的にも手札的にもアドバンテージを稼げる。序盤から積極的に出していけるモンスターである。特性としてはかなり攻撃的であり、押している時に召喚すると、ショッカー以上のエンドカードになることもしばしばである。
ただし、奪われるともっとも痛いモンスターなので、フォローをしっかりしないと一気に逆転されたりもする。
これらの特性を見て、自分のデッキに必要と思うモンスターを選び抜こう。
○ 事故を起こさないためのバランス調整
ここからが感性での微妙なバランス調整となる。スタンダードにおいては、骨組みはすぐに作れるため、このバランス調整がデュエリストの個性を発揮する場といえるだろう。
一般的なスタンダードにおいて手札事故の原因になりやすいカードは次の3種類である。
・上級モンスター
・抹殺の使徒
・サイクロン
みなさんも覚えがあるのではないだろうか。手札がなくなり、追い込まれてドローしたカードがその状況ではまったく使えない上記のようなカードだったということが…。
これらの手札事故を防ぐ一番簡単な方法は、上記のカードをデッキから抜くことである。
だが、ここで悩みどころなのは、これらのカードが場面によっては凄まじい威力を発揮するカードであるという点である。
上級モンスターは前述した通りであるし、抹殺の使徒は序盤に決めれば一気にデュエルの流れを持っていける。
サイクロンは、言うまでもなく貴重な伏せ除去魔法であり、全部抜くと必要な場面でかなりつらい。
となると、これらをただ抜けばいいというのではなく、また「事故ったら事故った時さ」などと呑気に構えるのもいただけない。
ここで必要になるのがバランス感覚である。
これは実戦で養うしかないので、ここでどうこう言っても仕方ないのだが、僕が普段注意していることをいくつか書き出してみよう。参考になれば幸いである。
まず、ドロー事故を起こすのは手札が少ない時である(手札0でサイクロンを引くなど)。
↓
ならば、手札が0という状況を作り出さなければいい。
↓
パーシアスを投入する(ドロー補助)。
↓
パーシアスにとって怖いのは奪われることである(強奪など)。
↓
それを防ぐためにサイクロンを3枚投入(このサイクロンはエンドサイクに使えるため、パーシアスの攻撃補助にもなる)。
↓
パーシアスがいると、裏守備がそれほど怖くないため、抹殺の使徒はなくてもいい。
↓
サイクロンはフル投入し、抹殺の使徒は入れないというカードチョイスによってバランスを取る。
このような感じになる。これがバランス調整である。
ちなみに、上級を2体入れた状態で、さらにサイクロンと抹殺の使徒を全てフル投入するのは少々危険であると僕は考えている。だが、先に述べたようにこれはあくまで僕のバランス感覚である。また、その他のカードも強く影響してくるため、ここで述べた考えは参考程度にとどめておいてもらいたい。
要は、このようなバランス調整はかなり微妙なところまで必要になってくるということである。そしてそれは実戦でのみ磨かれる感覚である。
使い込まれたデッキほど強いのは、このような微調整がデュエルを通して自然に行われるからだ。
つまり、デッキは成長するのである。
3・スタンダードにおけるプレイング。
さて、いよいよ実戦におけるプレイングであるが、実はプレイングというものはデッキによって様々である。
当然であるが、スタンダードは個人の個性が出るため、ここで僕がこうしろ!と言ってもそれは実際のデュエルでは使えない。
ただし、参考になる部分もあると思うので、僕なりのプレイング術について述べたいと思う。
○ 手札事故の定義
デッキ構築の時点でも述べたが、デュエルでは手札が事故を起こすことがある。スタンダードデッキはもともと限りなく事故が起こらないように計算されて作られたデッキだが、それでも起きる時は起きる。
事故の時の対処法を述べる前に、まずは初手の手札事故の定義を僕なりに述べてみたい(モンスターだけ、またはモンスターがいないというのは当然として)。
通常のスタンダードにおいて、
「強欲な壷」「天使の施し」×2「黒き森のウィッチ」「クリッター」×2「王宮の勅命」の7枚のうち1枚も初手(6枚)にこなければ、それは手札事故といえる。
ちなみに、「強引な番兵」「押収」「いたずら好きな双子悪魔」をデッキに投入している場合は、それも上記の7枚に付け加えて欲しい。もし上記のカードで入れていないカードがある場合は(クリッターが1枚である等)、7枚からそれを引いて欲しい。
だが、出来るだけこの7枚は入れることをオススメしておく。
さて、番兵、押収、双子悪魔も加えると最大10枚になる「初手のキーカード」が1枚も最初の手札にない確率はわずか16%程度である(悪魔皇帝さん調べ)。
7枚時から前後することを考えると、スタンダードにおいては2割前後の確率で事故が起きることになる。
ところで、このコラムの初めに、「3回やって2回勝てるデッキがスタンダードである」と述べた。
このことに注目すると、まさに事故率と敗北率は一致していると言えるのではないだろうか。
すなわち、事故が起きなければ勝てるデッキこそが、理想とするスタンダードであり、事故を起こさなければ勝てるプレイングこそが、常勝につながるプレイングであるといえる。
しかし、そうは言っても事故はつきものである。では実際に手札事故を起こした際にはどう対処すればいいのか。簡単に検証してみよう。
○ 手札事故の対処法
手札事故を起こすということは、当然であるが非常に不利な状態である。それを相手に悟られては、弱点を一気に突かれて倒される危険性がある。
特にスタンダード同士だと、事故を起こしたほうがほぼ確実に負けるため、事故を起こしていることは絶対に悟られてはならないのである。
そのため、事故を起こした時は、極力耐えるプレイングを心がけよう。強引な番兵などで見られてしまったときは仕方ないが、それ以外なら上記のキーカードをドローできるまでなるべく動かないようにするのが賢明だ。
なぜなら、手札が多いほど相手にとってはプレッシャーがかかるため、攻め込んでくる確率が減るからである。
スタンダード同士の戦いでは、消耗戦になりやすく、先に手札を枯らしたほうがほぼ確実に負ける。
つまり、手札を使い切ってラッシュをかけ、相手を仕留めきれなかったとき、それらの攻撃は次のターン全て自分に跳ね返ってくる可能性が高いわけである。
しかし相手の手札が少なければ、ラッシュをかけられる心配もない。少々の危険は顧みずに襲い掛かっても問題はないだろう。
ということは逆説的に言えば、「手札さえ多く持っていれば、ラッシュをかけられる確率が下がる」わけである。
事故を起こしても、それを悟られないようにうまく手札をキープできれば、相手はなかなか攻撃してこない場合が多いだろう。
こちらが手札を大量に持っているのに序盤から手札を使い切るような攻撃をしてくる相手には、事故さえ起こさなければまず負けないので、大丈夫である。
○ 手札事故の見破り方
また、逆に相手の手札事故を見破ることができればかなりの確率でそのデュエルをものにできるだろう。
手札事故を見破るには強引な番兵や押収で手札を見ることが一番効果的なのだが、それ以外にもちょっとしたテクニックがある。覚えておくと便利かもしれない。
「初手のキャノンは事故の証」
どういうことかというと、初手に相手がキャノンを召喚してきた、または初手に出した裏守備を叩いたらキャノン・ソルジャーだった、という場合は、相手が手札事故を起こしている確率が極めて高い。
なぜならキャノン・ソルジャーは、中盤以降のコンボで役に立つモンスターであり、初手に単体で出してもまったく役には立たないからだ。
それを召喚してくるということは、すなわち他に召喚できるモンスターがいないからである。
この場合は遠慮なく攻撃を仕掛けてみよう。
ちなみに裏守備が八汰烏やならず者傭兵部隊だった、という場合も同様である。
「初手に伏せ1なら事故を疑え」
初手に、相手がモンスターを召喚せず、伏せを1枚だけ出してエンドすることがある。こうなったら、すかさず相手の手札事故を疑おう。
人の心理として、事故を起こしてモンスターが手札になくても何もせずにエンドすると事故がバレバレであるため、ハッタリの伏せだけは出しておこうとする意識が働くことが多い。
しかし、人によってはわざとモンスターを出さずにやり過ごしてから動く、というプレイングを仕掛けてくる場合もある。
見分け方は、とりあえず攻撃してみることだ。理想はウィッチかクリッターである。
この時、相手の伏せが「和睦の使者」か「スケープ・ゴート」なら、相手の手札は事故を起こしてはいないと思われる。
この2枚は、ほぼ確実に相手の攻撃を止めることができるため、モンスターを召喚しなくてもLPを守れるからである。
その場合は通常どおりの駆け引きを続けていくといいだろう。
しかし、伏せがミラフォや筒などのチェーン不可罠だったら…またはサイクロンなどのブラフ(ハッタリ)だったら。
これはほぼ間違いなく事故である。手札にモンスターがいないのだ。
ミラーフォースや魔法の筒のように、簡単に除去される罠をしかも除去魔法を喰らいやすい初手に出すということは、それだけ切羽詰っているという証拠なのである。本来ミラフォを初めとする強力なチェーン不可罠は序盤に伏せるべき罠ではないからだ。
「とりあえず何かは出しておかないと」という意識が伏せを置かせるのだが、モンスターも出さずにミラフォだけを出すのは初手としてはあまりに危険である。
ミラフォしか伏せないのは、それしか伏せれないからなのだ。
例えモンスターを破壊されても、次のターンで容赦なく攻撃しよう。ちなみにブラフのみの場合は間違いなく事故を起こしている。
スタンダードでは、攻め時を見極めるのが難しい。逆に、攻め時をきちんと見極めることが出来ればそのデュエルはもらったも同然だ。そのためにも、相手の手札は出来るだけ予想しよう。
○ 手札とデッキを見極める
デュエルにおいて、相手の手札を見ることが出来れば、かなり有利に試合を進めることが出来る。
また、相手のデッキタイプをいち早く知ることが、勝利につながることになる。
デュエルは情報戦なのだ。
相手の手札を見破るには、魔法では強引な番兵、押収、罠では死のデッキ破壊ウイルスなどが一般的だが、それ以外にもプレイングから見破る方法がある。
先に述べた手札事故の見破り方もその一例だ。
例えば、相手が黒き森のウィッチで上級モンスターやキャノン・ソルジャーをサーチした場合、高確率で手札には心変わりや強奪があることがわかる。
他にも、こちらの場にショッカーがいるときに相手がウィッチでキラースネークやキラートマト、またはジャイアント・ウィルスなどをサーチした場合、強制転移とのコンボに注意する必要がある。もし手札にスケープ・ゴートなどがあれば、対策として伏せておくのがいいだろう。
これが逆にならず者傭兵部隊などをサーチしたのであれば、手札に適当な魔法カードがないからならず者をサーチせざるを得なかったのだな、と予想がつく。
このように、相手の行動の一つ一つから、手札を予想し、先に対策を立てておくのだ。
相手の行動を受け流すことは手札アドバンテージを稼ぐことに繋がるため、スタンダードでは相手の戦略を知ることこそが勝利につながるといっても過言ではないのである。
また、相手のデッキを早めに予想することも必要だ。
仮に相手がデッキ破壊であれば遠慮せずに攻撃を仕掛ける事ができるし、墓守デッキならば、ネクロバレーによって役に立つかどうかわからない早すぎた埋葬などを早めに捨てることもできる。
スタンダードを相手にした場合は、デッキがわかってもそれほどの効果は得られないため、手札を読むことのほうが重要になる。
しかし、特殊コンセプトを用いたデッキでは、たった1枚のカードからデッキが推測できることがある。
例として挙げるなら、下図のようになる。左のカードが入っていればほぼ間違いなく右のデッキタイプである。
ニードルワーム & 悪魔の偵察者 = デッキ破壊デッキ
墓守の○○○ & ネクロバレー = 墓守デッキ
巨大ネズミ = 地属性系のデッキ
ピラミッド・タートル = ヴァンパイアロードデッキ
追い剥ぎゴブリン = ハンデスデッキ
などといった感じである。これも経験を積めば最初のターンから見破れるようになってくる。
デッキタイプがわかれば、ある程度相手の行動と残りのカードを予想することも出来るため、デュエルを有利に進めることが出来るだろう。
例:ハンデスデッキならポッド系は高確率で入っていないと予想できる、等。
○ 墓地を覚える
相手の墓地を覚えておく癖もつけたほうがいい。墓地に落ちたカード次第で、自らの行動も決まってくるからだ。
たとえば、代表的な例として、聖なるバリア−ミラーフォース−が墓地に落ちているときは遠慮なくラッシュをかけられる、というものがある。
ミラフォは制限である上に、攻撃誘発型の罠としてはもっとも恐ろしい能力を持っているため、これが墓地にあるというだけで複数体での攻撃が容易になるのである。逆にミラフォがまだデッキに眠っている間は、伏せを除去してからでないと総攻撃をかけにくい。精神的なプレッシャーという点で、ミラフォがどこにあるかは大きなポイントとなる。
また、その他確認すべき点は、制限カードが墓地に落ちているかどうかである。特にサンダーボルトやブラックホールが墓地にあるならば、安心してモンスターを並べることが出来る。
勅命が落ちているかどうかも重要だ。それによって、サイクロンの使い方が変わってくるからだ。
このように、相手の墓地をしっかり覚えておくことは、もはやデュエルでは必須といえるだろう。
○ ウィッチで何をサーチするか
このウィッチサーチは、デュエルでも大きなウエイトを占める重要ポイントである。
ウィッチが墓地に送られた時に何を持ってくるかで、デュエリストの腕がある程度決まると言ってもいい。
もちろん最優先すべきは「その時必要なモンスター」なのであるが、それが曖昧である時には、一応次のように覚えておくと便利だ。
「手札か場にクリッターがいればアタッカー。なければ場持ちするモンスター」
アタッカーとは、攻撃力1900(1800)モンスターや上級モンスター。場持ちするモンスターとは、キラートマトや魂を削る死霊などである。
これは言うまでもないが、モンスター切れを防ぐためである。デュエルでもっとも怖いのはモンスター切れであり、モンスターが切れることは負けを意味するほど重大な問題なのだ。
もし手札か場にクリッターがいれば、かなりの確率で再びモンスターをサーチすることが可能である。
しかし、クリッターがいないのにショッカーをサーチした場合、下手をすればモンスターが切れてしまう可能性もある。
アタッカーとショッカーは、押している時は最強であるが、もっとも奪われやすく破壊されやすいモンスターであるからだ。
一撃の威力は確かでも、場持ちという点ではアタッカーやショッカーはまったく信頼できない。状況によっては、ウィッチでクリッターをサーチするということも必要である。
また、上記の戦略には例外もある。手札と場にクリッターがなくても、「リビングデッドの呼び声」があればウィッチを再利用できるため、事実上もう1回のサーチが可能だ。その場合は、アタッカーをサーチしても特に問題はないだろう。
ただし、それも相手がショッカーを出してこなければの話であるから、サーチは慎重に行おう。
運の要素をできるだけカットして、確実に勝利を呼び込もうとするスタンダードにおいて、ウィッチサーチはまさにその象徴とも言えるプレイングの一つである。
すなわち、ウィッチサーチを制する者がスタンダードを制するのである。
付け加えると、クリッターでサーチするモンスターに迷ったならば、とりあえずウィッチをサーチしておけば問題ない。
○ アタッカーとサイクロンの相性
アタッカーとサイクロンは非常に相性がいいということを覚えておいて欲しい。
アタッカーとは、1900モンスターに代表される高攻撃力モンスター、そして上級モンスターである。
なぜ相性がいいのかというと、
アタッカーにとってもっとも怖いのは奪われることであるからだ。
OCGにおいてモンスターを奪うカードはそれほど多くはない。
そのうちの一つであり、必須カードとして名高い「強奪」を無条件で破壊できる点は大きいといえる。
また、相手の「早すぎた埋葬」をも破壊できるため、やっかいなウィッチ蘇生→上級モンスター召喚というコンボも容易に防ぐことが出来るのである。
また、サイクロンのもう一つの特性として、「エンドサイク」がある。
知らない人のために言っておくと、エンドフェイズに伏せておいたサイクロンを発動することにより、本来ならチェーン可能な相手の罠&速攻魔法を無抵抗のうちに破壊できるのである。
これは、「伏せたターンには発動できない」という罠(速攻魔法)の特性を逆に利用したテクニックである。
実はアタッカーにとって罠は天敵である。
ウィッチなどの様子見攻撃にミラフォを発動されても特に痛くはないが、これがヴォルスの攻撃に対してのものなら痛さは倍増する。
まだミラフォなら次のターンでも壊せるが、和睦の使者などにサイクロンを使ってしまうと、チェーンされてしまい、貴重な伏せ除去を浪費したことになる。
しかし、エンドサイクなら和睦の使者とて無力化する。しかも、相手のエンドフェイズに行うことにより、相手はそれ以上の行動が取れない。
つまり、エンドサイクの一発によって主導権を握れるわけである。
「強奪」を破壊できる。
「埋葬」を破壊できる。
「エンドサイク」で相手の罠を潰せる。
いかがだろうか。サイクロンを伏せるということには、これだけの用途があるのだ。しかも、元々が使い捨てのようなカードであるから、仮に大嵐やサイクロンで破壊されても特に痛くはない。むしろ相手の伏せ除去が減ることにより、安心してチェーン不可罠を伏せられるというメリットも生まれる。
こうしてみると良いこと尽くしであるが、忘れてはならないのは「サイクロンは押している時にしか使えない」ということなのである。
相手の逆転を防ぐ優れたカードではあるが、反面ピンチの時に引いても何の役にも立たない。せいぜいがブラフとして伏せる程度である。
このことからも、ただ詰め込めばいいというのではなく、「デッキに入れるサイクロンの数こそ、もっとも慎重に選ぶ必要がある」ことがわかるだろう。
サイクロンを有効に使え出したら初級は卒業したと言えるだろう。
○ 番兵と押収による戦略看破
強引な番兵と押収は、相手の手札を見ることが出来る貴重なカードである。1枚戻したり捨てたりも出来るわけだから一石二鳥だ。最初のターンでどちらかを放つことが出来れば、かなりの確率で主導権を握れるはず。
相手の手札を見ることで、その後の戦略予想が立てられる。ここで提案する戦略の一つは、「相手のカードを紙にしてしまう」という事である。
例えば相手の手札に抹殺の使徒のような特定の場面限定のカードが入っているならば、それを残し、絶対に裏守備を出さないようにする。こうすることで相手の手札を1枚、無駄にすることができるわけだ。
ただし、デュエルは生きものなので状況は常に変わるということを覚えておこう。手札把握を過信するのは危険である。
ちなみに最優先して戻す(捨てる)べきなのは、ドロー系魔法と勅命である。もちろん例外も多いが。
逆に相手に手札を見られた時は、こちらの行動を予測して動いてくることがほとんどである。
相手に見られていないドローカードを有効に使い、相手の術中にはまらないようにすることが大事である。そうはいっても相当なプレイング技術を要するが。とりあえず見られた時点でそれまでの戦略は捨てたほうがいい。
常識であるが、相手がこちらの強力な制限カードを戻さずにサイクロンを戻してきた時は、ほぼ確実に勅命を伏せてくる。覚えておこう(ミラフォなどの場合もある)。
○ 先攻の戦い方、後攻の戦い方
OCGでは、先攻が圧倒的に有利である。何の制約も受けずに魔法を使える上、相手よりも先に態勢を整えて待ち受けることが出来るからだ。
初手は先攻後攻問わず6枚目のドローが可能なので、OCGではある意味、「先攻を取ったほうが勝ち」ともいえるわけである。
テニスを知っている人ならわかるだろうが、先攻は言わばプロの世界で言うところのサービスゲームだと思ったほうがいい。プロのテニスプレイヤーは、自分のサービスゲームを確実にキープし、相手のサービスゲームをいかにブレイクするか、という戦い方をする。それだけサービスゲームが有利だということである。
それもそのはず、テニスにおいても、相手の制約なしに自分の好きなショットを打てるのはサービスゲームだけだからだ。
OCGの先攻もつまり、同じ理由で有利と言えるのである。
さて、話がそれてしまったが、先攻有利である以上、確実に先攻時は勝利したいところだ。
先程述べた通り、ウィッチ、クリッター、壷、施し、勅命、または番兵、押収、いたずらなどを最大限に利用して陣を敷くのがいいだろう。
先攻時は、押し切るプレイングが重要になってくる。
逆に後攻時は、後攻であるというだけで既にハンデを背負っていることを忘れてはならない。同程度の力の持ち主相手なら負けることも仕方ないのだが、そんなことを言っていてはマッチ戦では勝てない。苦境を跳ね返すプレイングが必要である。
具体的に言うと、相手の策略に乗らないことだ。1ターン目の相手の動きで、ある程度相手の手札予想するやり方を書いたが、そういった方法で出来るだけ相手の戦略を早めに看破し、対応する必要がある。といっても上級者相手には限りなく難しいといえるが。
また、撹乱することも有効である。時にはサイバーポッドやファイバーポッドを使うことで、手札をリセットしたり大きく戦況を動かし、相手の計算を狂わせるのである。どうせ後攻の時点で不利なのだから、これらのバクチカードを使うことで相手を混乱させよう(厳密に言うとファイバーポッドはバクチカードではないが)。
こうして考えると、
先攻時は「なるべく運の要素をカットし、押し切る」プレイング。
後攻時は「運の要素も絡めながら、積極的にアドバンテージを取り返していく」プレイング。
が、それぞれ重要であるといえる。
4・サンプルデッキとその戦い方。
最後に、例としてサンプルデッキを載せたいと思う。戦い方も書いておくので、参考にしてもらいたい(カード名は略称を使用した)。
モンスター×16→個人的にはモンスターの枚数は16枚がベスト(上級の数問わず。クリボー除く)
ショッカー1
パーシアス1→2枚目の上級はモンスターのキーカードである。ここでは序盤から終盤まで万能に使えるパーシアスをチョイス。
ゴブ突1→ロードの登場により需要が増している。2枚入れてもいいかもしれない。
ヴォルス2→1900モンの数調整が上手くいかない時は1900モン2、スピア1で組むとバランスが取れることが多い。
スピア1→魂を削る死霊の登場により重要が増している。デッキによっては2枚入れるのもアリ。
ウィッチ1
クリッター2
キャノン1
お注射天使リリー1→爆発力に期待。
異次元の戦士1→ウィッチ対策というよりもむしろショッカー&ロード対策。
異次元の狂獣1→1回殴れば十分。バインド下でも動けるのはポイント高し。
キラスネ1
魂を削る死霊1→壁になり、上級の生け贄にも最適。
八汰烏1→無理にロックを狙うのではなく、アドバンテージを稼ぐ意味で使う。
魔法×18
サンボル1
ブラホ1
羽根帚1
大嵐1
サイク3→アタッカーがやや多めなので、エンドサイク重視でフル投入。パーシによるドローで事故をカバー。
蘇生1
埋葬1
壷1
施し2
心変わり1
強奪1
羊1
番兵1
押収1
転移1→この辺の魔法は融通が利く。護封剣や2枚目の羊を入れたりするのも面白い。
罠×6→攻撃的にするなら上から4枚でも構わない。7枚以上入れるときはショッカー対策をしておこう。
勅命1
破壊輪1
ミラフォ1
リビング1
和睦2→パーシアスとの相性を最大限に考慮した。扱いやすさも重視。
〔戦い方〕
最大のキーとなるのは、天空騎士パーシアスによるドロー効果である。パーシアス+和睦の使者。もしくはパーシアス+サイクロンの組み合わせは、やってみるとわかるが非常に強い。特に和睦の使者は、奪われる対象になりやすいパーシアスの弱点を補うのに最も適したカードである。とりあえずパーシアスを単体で置いておくのは危険なので、これらのカードと一緒に出すといい。
しつこいほどにパーシアスを守り、異次元の狂獣や魂を削る死霊、八汰烏などの特殊効果を持ったモンスターによってハンドアドバンテージを稼いでいく。お注射天使リリーの爆発力と破壊輪、キャノン・ソルジャーなどのフィニッシュカードも充実しており、一度波に乗れば苦もなく押し切ることが出来るデッキである。
その分手札事故を起こすと目も当てられないので(特に3枚入ったサイクが原因で)、パーシアスのドロー効果を最大限に生かすことが重要である。ただし、無理にパーシアスを使う必要はない。例えば八汰烏で殴っても、パーシアスと同等の効果を得ることが出来るからである。
5・最後に。
いかがだっただろうか。まだまだ書き足りないところはあるが、ひとまずここまでにしたい。
スタンダードデッキとは、新カードが出るたびに、「これは強いのだろうか」「これはこのカードを抜いてでも入れる価値があるのだろうか」と、幾多のデュエリストが試行錯誤する中から生み出された究極のデッキの形である。
だからこそ強いのは当たり前だ。だが、既に大まかな形が決まってしまっているために、そうした歴史を知らない者は時に、スタンダードをつまらないデッキと言うことがある。だが、30枚程度が固定となってしまっているからこそ、残り10枚で差が出るスタンダードほど面白く、奥の深いデッキもない。
選び抜かれた40枚が最大限の輝きを放つデッキ―――――スタンダードこそが、実は「強さ」というテーマを突き詰めた究極のファンデッキと言えるのかもしれない。
※以下のコラムもスタンダード構築においては重要であるので、併せて読んでもらいたい。