カードコラム「王宮の勅命」
誰しもがデッキに入れるであろう事実上の必須カード、王宮の勅命。
だが、その効果と、真の狙いを勘違いして使ってはいないだろうか。
スタンダードデッキをベースに、王宮の勅命の強さの秘密に迫る。
1・スタンダードにおける「魔法」の概念。
ここで改めて基本に立ち返り、「魔法」というものについて考えてみたい。
例えばバインドデッキだったり、特殊なデッキにおいては、魔法を防ぐということが戦略の大きなウエイトを占めている場合も多い(バインドを大嵐から守る等)。
ところがスタンダードにおける「魔法」の概念は、それらのデッキとはまったく違う。
何が違うのか、まずはスタンダードのスピードである。
守ったり、削ったりするデッキに比べ、殴りデッキであるスタンダードのスピードはとにかく速い。逆にいえば、守備力に難があるため、さっさと殴らないとこっちが先に殴り殺される場合も多々あるわけだ。
だが、スタンダードの攻撃力は半端ではないため、今のところスタンダード(殴りデッキ)が一番強い、とされているのである。
さて、そこでスタンダードにおける魔法の概念だが、みなさんは魔法を「防ごう」と思っているだろうか?
もし思っていたら、それは特殊デッキにのみ言えることであって、スタンダードには当てはまらない。
スタンダードにおいて、魔法は、「喰らって当たり前」なのである。
結論から言えば、「魔法は防ぐものではない」ということにもなる。
2・勅命の意味
では、王宮の勅命は何のために存在するのか、なぜ必須カードとまで呼ばれ、確実にデッキに投入されるのか。
実は、王宮の勅命の真の目的は、魔法を防ぐことではない。
意外に思われるかもしれないが、先ほど述べたように、魔法とは喰らっても仕方ないものであり、常に喰らっても立て直せるだけの余裕を持ってデュエルを進めていなければいけないのである。
(例えば、サンボルを喰らってもダイレクトを喰らわないように和睦を伏せておく、など)
つまり、受け流しこそすれ、無理に魔法を防ごうと思ってはならない。
例を挙げると、現時点で魔法を防ごうと思えば、マジック・ジャマーが一般的であるが…。
仮にマジック・ジャマーにコストがなかったとしても、王宮の勅命のほうが優秀である。
無論その場合、ジャマーの使い勝手は飛躍的に上がり、必須カードと呼ばれるかもしれないが、だからといって勅命の地位は揺らぎはしないだろう。
なぜなら、勅命の真の役割は、「魔法を防ぐこと」ではなく、「相手の動きを拘束すること」にあるからである。
勅命の強さは、継続できるところにあり、継続することの強さは、相手の魔法を永続的に封じることで、相手の戦略を防げるところにある。
これがジャマーだと、相手の魔法を1回防げても、相手はすぐに次の手を繰り出してくるだろう。
相手の手札が充実している時には、ジャマーはさほど意味をなさないのである。
逆に、勅命は相手の手札が多くても、サイクロンなど特定のカードがない限りは、そのターンの相手の行動をほぼ100%近く抑制することができる。
制限変更によってかなり瞬殺が出来にくくなったとはいえ、まだまだOCGは大逆転可能なゲームである。
1ターン、下手をすれば継続することにより、いくらでも相手の行動を制限できる王宮の勅命は、まさにこの部分にこそ強さがあると思っていいだろう。
相手の手をかわし、カウンターで殴り倒す。
王宮の勅命こそは、スタンダードにおいて、「相手の計算を狂わせ、自分のペースに引きずり込むことができる」稀有なカードなのである。