カードコラム「強制転移」

 

今やスタンダードの準必須カードとして、上級者に愛用されている「強制転移」

同時に発売された八汰烏やお注射天使リリーの影に隠れがちだが、その秘めた力は計り知れない。

ここでは、強制転移をどう使うか、ということについて触れたいと思う。

 

1・基本的な使い方

 

強制転移の使い方であるが、もちろん強制転移の最大の利点である「永続心変わり」ということを生かすことに集約されるだろう。

すなわち、相手モンスターを奪う「心変わり」や「強奪」の補助として使うやり方である。

心変わりや強奪のように制限カードになっていては、相手モンスターを奪うことは困難である。そこで、強制転移の出番だ。

実はこの「奪う」という効果を持ったカードは意外に少ない。心変わりや強奪を除けば、おそらく強制転移ぐらいのものだろう。

そしてこの強制転移にのみ制限も準制限もかかっていない(6/5)現在。

ならば、その利点を徹底的に生かすべきではないだろうか。こちらから送るモンスターさえ間違いなく選択すれば、場合によっては心変わりをも超える優秀なカードなのである。

 

2・何を送るか

 

強制転移のもう一つの特徴として、相手モンスターを奪う代わりに自分のモンスターを相手に渡すということがある。ここが、強制転移のもっとも特殊な部分であろう。

つまり、何を送るかで、強制転移の効果は2倍にも3倍にもなるのである。

 

まず第一に考慮に入れるのは、送っても損のないモンスターである。

つまり、「キラー・スネーク」や「スピリットモンスター」などのように、墓地に行けば、またはターンエンドすれば自動的に手札に戻ってくるモンスターである。

これなら、実質相手モンスターのコントロールを奪っただけなので、100%こちらが得をしていることになる。

スケープ・ゴートを相手ターンに発動し、自分のターンで攻撃表示にしてから送ってやるのも面白い。

キラスネと同じ要領で、大ダメージが期待できるだろう。

 

また、「キラー・トマト」や「巨大ネズミ」といった遺言系モンスターも面白いだろう。

キラー・トマトを送り、奪った相手のモンスターで撃破、さらにキラー・トマトの効果で自分の場に黒き森のウィッチを召喚し追撃………といった具合に、一粒で二度美味しい効果が期待できる。

では、各属性遺言系モンスターを送った場合、何を特殊召喚するのが得策かを簡単に検証してみよう。

 

闇属性の場合

キラー・トマトから召喚できるモンスター例。

黒き森のウィッチ:制限サーチカードであり、早めに場に出したいモンスター。あらゆる場面において上策である。

クリッター:ウィッチに及ばないものの、安定して追撃できる。

首領・ザルーグ:闇属性では珍しいハンデスカード。相手の手札を削れるために、かなりのアドバンテージを稼ぐことができる。

キャノン・ソルジャー:奪ったモンスターが自分にとって不利になるモンスターの場合、キャノンを召喚することで飛ばしてしまおう。ダメージも与えられ、フィニッシャーとしても使える。

 

地属性の場合

巨大ネズミから召喚できるモンスター例。

お注射天使リリー:ダイレクトが可能な状況であれば、迷うことなくこいつを召喚し、大ダメージを与えてやろう。これだけでデュエルが終わる場合すらある。

異次元の戦士:相手の場にウィッチなどの嫌なモンスターが残っている場合は、こいつを召喚して攻撃しよう。ヴァンパイアロードなどにも絶大な効果を発揮するため、需要は高い。

隼の騎士:リリーには及ばないものの、ダイレクトすれば2000のダメージを与えることができる。クリボーを使わせにくいのも利点。

 

風属性の場合

ドラゴン・フライから召喚できるモンスター例。

ドル・ドラ:制限カードではあるが、次のターンに確実な生け贄となる。うまく利用すれば、簡単に上級モンスターを引っ張りだせる。

ブレード・フライ:力負けしやすい風属性モンスターだからこそ、こいつを召喚してパワーアップしてやろう。地属性モンスターを弱体化できるのも見逃せない利点だ。

 

光属性の場合

シャイン・エンジェルから召喚できるモンスター例。

白い泥棒:ザルーグと同じように手札を剥ぐことができる。追いはぎゴブリンを発動しておけばさらに効果は増す。

ものマネ幻想師:相手の強力なモンスターをコピーできるため、いざというときに役に立つ。召喚する機会はあまりないかもしれない。

スーパー・スター:光属性モンスターの攻撃力を底上げし、闇属性モンスターを弱体化させる。闇モンスターには強いモンスターが多いため、かなり使える。

 

水属性の場合

グリズリー・マザーから召喚できるモンスター例。

魔力吸収球体:攻撃力は低いが、次のターン、相手の魔法を止められるため、相手にとってはいやらしい。

プリンセス人魚:多くの場合、このモンスターを呼び出すことになるだろう。フィールド魔法と合わせれば絶大な力を発揮する。

 

炎属性の場合

UFOタートルから召喚できるモンスター例。

ビッグバンガール:ビッグバンデッキでしか使われないため、あまり呼び出すことはないだろう。それでも場に出れば相手にとってはかなりのプレッシャーである。

コマンド・ナイト:多くの場合、このモンスターを呼び出すことになるだろう。戦士族モンスターの能力値の底上げは馬鹿にならない。

 

 

いかがだろうか、こうしてみると、属性によって様々な違いがあるのが分かる。使いやすいのはなんといっても闇属性だろう。状況に応じて多彩なモンスターを呼び出せるため、実に安定している。だが、パワーではリリーを呼び出せる地属性が勝る。

こうしてみると、「スピードの闇、パワーの地」という図式がはっきりしてくる。

 

また、番外として、アメーバやグリグルを送るのも面白い。攻撃表示で送って攻撃してやれば、LPの上でかなりのアドバンテージとなる。

 

ここまで読んで、あることに気付いた人もいるのではないだろうか。

 

そう、相手に自分のモンスターを渡すという行為が、「死のマジック・ボックス」と非常に酷似しているのである。

自分のモンスターコントロールを相手に移せるのはこの2枚のカードしかないため、これらのカードをうまく使いこなせば、かなりトリッキーなコンボが可能なのである。

 

加えて、心変わりの効果をも同時に併せ持つ強制転移は、必須カードが出尽くした感のある現スタンダードにおいて、新たな必須カードとでも言える存在ではないだろうか。

 

そしてそれは、かつての必須カードの立場すら危ういものとする可能性をはらんでいるのである。

 

3・弱点

 

とはいえ、強制転移にもやはり弱点は存在する。それは、このカードの特徴でもある、「お互いに」送るモンスターを選ぶ、というところである。

すなわち、相手のモンスターが2体以上いる場合、自分がもらえるモンスターは相手が選ぶ、ということなのである。

 

これは、意外とやっかいだ。相手のフィールドにショッカーが存在していても、その横にクリッターがいては強制転移の効果は半分も出せない。なぜなら相手は間違いなくクリッターを選んでくるからである。

つまり、強制転移を使用する場合は、なるべく相手の場に強力なモンスターが1体だけの状況で使いたい、ということである。

 

また、スケープ・ゴートにも非常に弱い。相手の場にショッカーしかいないからといって、安易に強制転移を発動すれば、伏せがスケープ・ゴートだったときに羊を選ばれて大損をしてしまう。相手の伏せには、常に注意を払いたい。

 

 

4・まとめ

 

さて、こうしてみると、強制転移がかなり特殊なカードであることがわかっていただけたのではないかと思う。

 

心変わりや強奪のようなコントロールを奪う効果を持ち、なおかつ死のマジック・ボックスに酷似した自軍モンスターを相手に渡す効果を持つ。なおかつ、対象を自分で選べず、スケープ・ゴートに弱いという、言うなれば地割れの弱点とそっくりな特性をも併せ持っているのである。

 

このような複数の効果を持ったカードは、今までにはなかなかなかったタイプのカードである。

しかし、その効果のほどは、使い方を間違えなければ凄まじいものがある。

今まで使ったことがないと言う人は、ぜひデッキに1枚入れてみよう。いかに汎用性に優れているか、すぐにわかるはずである。

 

コンボカードに思われがちだが、ほとんどのモンスターと組み合わせることが可能な強制転移は、もはやコンボカードとは呼べないほどの力を持っている。

 

コンボするアベックカードを選ばず、単体で十分な威力を発揮するコンボカード、それこそが新時代の必須カードなのかもしれない。

 

 

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