スタンダードデッキ(以下スタンと略)。普段私たちが普通に口にしている単語である。しかし、その定義は非常に曖昧で、デッキの形も決まったものではない。いったいスタンとは何なのか。ここでは、私なりの持論を展開してみたいと思う。もちろん私の個人的な意見であるので、異論・反論は大いに結構である。いつでも議論には応じる用意があるので、その旨がある方は、連絡を取っていただければいつでも対応する。
人の数だけ定義があってもおかしくない。それだけ難しいのがスタンの定義であろう。ファンデッキに対する形でスタンが使われる場合も多い。これらのことを考慮に入れた上で定義してみる。
デュエルに勝つことというより、「負けないこと」と言った方が適当かもしれない。自分が最強と思うカードの組み合わせ。それがスタンと言えるのではないだろうか。
デッキにあるテーマを持たせようとする。それはたとえばアンデット族中心であったり、水属性中心であるかもしれない。テーマを持つことは、採用するカードにこだわるということであり、それはスタンではなく「ファンデッキ」となる。デュエルに勝つことを念頭にし、デッキにテーマを持たせれば、それは「マイ・スタン」というべきものになる。一般的に広く知られている形のスタンではなく、自分が思う最強の組み合わせ。これこそファンデッキの真の姿ではないだろうか。
蛇足だが、特定のテーマを色濃く出し、勝負は二の次というデッキは「お遊びデッキ」として区別したい。勝てないデッキなら、誰にでも作れるのだから。
最強である。採用するカードにこだわらなく、自分で一番強いと思う組み合わせでデッキを作るのであるから、最強でなくてはならない。これは私の定義に則った場合であり、一般的な見解とは異なる。主観的に見ればスタンは最強なのである。
客観的な視点から見るとどうなるだろうか。現実には最強のデッキなどは存在しない。運の要素がゲームと深く関係しているカードゲームにおいて、最強の組み合わせは存在しないといってよいだろう。こちらが一般的な見解である。
スタンは安定性が高いといわれる。しかし、これは真っ赤なウソである。スタンは1種類しか存在しないわけではない。デッキ作成者が何に重きを置くかによって、スタンはその性格をがらっと変える。参考のため、いくつかスタンのタイプを紹介しよう。
文字通りなるべく手札事故が起きないように作成されたスタン。もし起きた場合においても、その被害を最小限にとどめようとした構成である。このタイプには汎用的に使える強いカードが多く投入される。そのため、よく言えばバランスがとれているという評価になる。ただ、汎用的に使えるためデッキの尖りが無くなる。デッキ能力はある程度尖らせるのが原則であるので、その観点から見るとこの形のスタンは疑問である。一般的にスタンと呼ばれているもののほとんどがこのタイプである。
攻1900モンを多く入れ、とにかく相手を素早く殴り倒すタイプである。パワー型のスタンともいわれる。アタッカーの主力であるブラッド・ヴォルスは3枚投入されることが多い。ウィッチの制限により攻1900モンがあまり使われなくなった現在、その存在はマイナーなものとなっている。しかし、圧倒的な攻撃力、豊富なモン除去魔法を投入した攻撃型スタンが弱いと決まったわけではない。むしろ、私はこのタイプのスタンが一番苦手である。
安定性重視型スタンに似ている感じもするが、番兵と押収が標準搭載なところが異なる。非常に玄人好みのタイプのスタンであり、デュエルのイロハがわかっていないうちは、使いこなせないだろう。手札把握による相手の行動の予測。そして相手の力を使ったカウンター攻撃。攻撃型スタンが受けを考えずに攻めるとしたら、対応型スタンは相手の力を受け流し、反撃するといった感じだろうか。ちなみに、私がスタンを作ると必ずと言っていいほどこの形に収まる。自分の性格と合っているのであろうか。
このほかにもスタンの形があるかもしれないが、代表的なタイプを紹介した。スタンは自分の性格を反映する鏡であると言える。個々のデュエリストが最善と判断する組み合わせの選定には、性格が深く関わっていると思うからである。自分の性格に合ったスタン。これを一度追求してみてはいかがだろうか。
なお、スタンには個性がないとよく言われるがそれは誤解である。スタンにもタイプがあり、その人の性格を色濃く反映していると思われる。人の性格はその人の個性に直結するものであり、その意味で言えばスタンは一番個性に富んだデッキなのである。
スタンの相対的弱体化が叫ばれて久しい。それを声高に喧伝しているのは、ほかならぬ私なのであるが。1戦のみのデュエルだと、スタンはほとんど何もできないまま負けるという姿も、今では珍しくないからだ。しかし、本来デュエルはマッチ戦が基本である。相手が自分のデッキの苦手なタイプなら、サイドデッキで対応すればいいのである。サイドデッキまで含めたデッキの「柔軟性」という面において、スタンはまだまだ抜きん出た力を持っている。
サイドデッキまで含めた、スタンの大改革。今こそそれを行うべきだと思う。一般的なスタンの形は、様々なデュエリストの共通理解から生まれる。よって共通理解を変われば、スタンの形も変わっていく。まあ、それを行うかどうかは、個々のデュエリストに任せられるのだが。
詳細は一番下の参考文献を参照してもらいたいが、私はこの意見に全面的に賛成である。勅命は魔法無効の維持ができるから強い。勅命維持状態でのハ・デスの凶悪さは、体験した者にしかわからないであろう。ノーコストでの魔法カウンターはおまけ程度に考えてもいいだろう。
OCGにおいて、カウンターは多大なコストを支払わなければならない。だったら、そのコスト分を攻撃に回した方が速い。これがカウンター罠がスタンには入らない理由である。勅命がスタンに入っているのは、ノーコストの魔法カウンターのためではない(これはこれで非常に強いが)。この理由がわかるようになれば、一つ上の段階に上ったといってもよいと思う。
手札コストのあるカードは、スタンでは嫌われる。どんな理由があるにせよ、ほかの可能性を捨ててまで使う必要はない。たとえ、コストがキラスネであったとしてもだ。手札の数は可能性と比例する。スタンは手札の枚数を維持し、いろいろな場面に対応していった方がよい。
基本的に殴って勝つスタンにおいて、貴重なダメージ源となる心変わりは必要である。しかし、やはり相手にモンスターを帰すのはもったいないので、上級2体+キャノン1枚くらいはデッキに欲しい。心変わりはできれば終盤に使いたい。エンドカードとしては、これほど優秀なものはないからだ。
いわゆるターボスタンである。蜃気楼というコンボ前提のカードをデッキに含めるのであるから、安定性は確実に低下する。また、その特有の戦い方から、どうしても攻撃型スタンにならざるを得ない。訳もわからずとりあえず蜃気楼をスタンに入れている人は、この点に留意していただきたいものである。
ハ・デス、レッサー、ロード、パーシアスあたりが代表的なものであろう。どれを入れるか非常に悩む選択である。各カードにはそれぞれ相性のいいカードが存在するので、それらのカードを基準にして考えるのもよいだろう。個人的には、安定性重視型にはロード。攻撃型にはパーシアス。対応型には、ハ・デス、レッサーを勧めたい。まあ、この選択は個人の好みの問題であるのだが。
セバスチャンさん作:カードコラム「王宮の勅命」